
※本コラムは、弊社代表の西尾が「月刊ガソリン・スタンド」で連載している内容をもとに、再構成・加筆したものです。
洗車と車内清掃を受注。作業中に元からあると思われるインパネの擦り傷を発見し、作業後に報告したところ、「傷はなかった」とクレームを受けた。最終的に店側が謝罪し修理代を負担したが、スタッフとしては納得できない。この場合、店側は修理代を支払う義務があるのか。スタッフはどう対応すべきだったのか。
今回のご相談は一見簡単なようで実際の対応は難しい事案です。まず法的な整理としては、SS側が傷をつけたのでなければSS側がその法的責任を負うことはもちろんありません。そして言った・言わないの点については、裁判では「立証責任」として整理されていて、自分に有利な法律効果の発生を求める側がその事実の証明をできない場合の不利益を被ることとなります。今回はお客様の方がSS側に傷をつけられたことを立証すべきことになり、もともと傷が無かったことなどをお客様が証明できなければ裁判でお客様の請求は認められません。
一方でビジネスにおいては法的な勝利が必ずしも正しい経営判断といえない場合もあるでしょう。今回も大口取引先の部長職の方とのトラブルということで、店長は法的責任を一旦横において経営上の合理性を考えて謝罪と修理代の補償をしたということでしょうし、それ自体法的に問題がある判断ではありません。
ところで、今年3月にはカスハラ対策の法案が今国会に提出されています。また先駆けて東京都では今年4月からカスハラ防止条例が施行されています。事業主のみならず顧客や就業者の責務として、カスハラへの理解や協力、対策をすべきことの法的裏付けが整備されつつあります。企業としてはカスハラへの対応指針を得るとともにカスハラから従業員を守ることが求められる時代になったということです。
今回のご相談でも顧客から不当と思われる要求を受けており、SSとして従業員への配慮を含めた対応が必要な事案です。再発防止に向けては、作業開始前の確認や写真等による記録化、上位者への報告などの手順整備のほか、発生時の事実関係の確認方法や従業員の安全確保といった対応方針の策定などの措置を検討する必要があるでしょう。一方で大口顧客と対立を回避し関係を維持することとの調整は高度な経営判断であり、最終的には経営者が責任をもって決断するしかありません。ただその際も、取引関係の維持と同じぐらいカスハラ対応に関する社会的要請や従業員への安全配慮、雇用の維持といった要素を考慮することが重要です。
ご相談のケースでは、明らかな証拠がない点をむしろ調整の余白として活かし、法的責任自体ではなく手続き面の改善点を認めたうえで割合的な分担を提案するかと思います。

西尾 公伸
弁護士・日本エクイティバンク株式会社代表取締役
第二東京弁護士会所属。中央大学法学部法律学科卒業、大阪市立大学法科大学院修了。
1983年生大阪府堺市のガソリンスタンド経営者の長男として生まれる。
中央大学法学部卒業後は大阪市立大学ロースクールへ進む。社会人アメフトのトップリーグであるXリーグで現役選手として活躍しながら司法試験に合格。所属するAuthense法律事務所では統括責任者としてアメフトで培ったチームワークをモットーに企業様や経営者様のに寄り添ったサポートを行う。事業承継に伴う未解決の課題を解決し、全ての現役オーナー経営者が経営をやり切るための仕組みと文化を創り出すために、2024年日本エクイティバンク株式会社を創業。
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